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ADAMの技術

アダムのS3Aモニタースピーカーが設置されているアビーロードスタジオ

アダムの正式名称はADAM Audio GmbHであり、1998年Klaus Heinzによってドイツのベルリンで設立されました。またADAMという名前は、"Advanced Dynamic Audio Monitors"の頭文字から引用されています。アダムは、業務用途のモニタースピーカーを専門にプロデュースすることを目標に発足しましたが、その成果はわずか5年余りにしてプロオーディオ界を席巻する勢いで拡大し続けています。それらプロ用モニタースピーカーはすでに39ヶ国に輸出されて活躍しており、日本は遅まきながらも40番目の国としてデビューを果たすことになったわけです。

A.R.T. ツイーター

アダムのスピーカーがそれほど急速にその認知度を高めた理由として、ハイルドライバーをベースとした独自のARTトゥイーターの存在があげられます。おりしもプロの現場では、次世代オーディオに対応可能な広帯域で位相特性に優れたスピーカーが求められていました。そして一部にリボントゥイーター等を使用したものがあるものの、広く受け入れられるまでには至っていません。そんな中にあってアダムのARTトゥイーターは、可聴帯域を越える35KHzを優にカバーしながら完璧な位相特性を実現し、しかもホーンスピーカーのようなエネルギー感とパワーハンドリング能力を併せ持っていることで、俄然注目を集めることになったといえます。

現在アダムのラインナップは、15cmウーハー搭載のコンパクトなニアフィールドモニターから、38cmダブルウーハーの大型メインモニター、そして18Hzからの再生を可能とした高品位マスタリングモニターまで、トータル20機種以上を擁するに至っています。特にロンドンのアビーロードスタジオのニアフィールドモニターとして名を上げたモデルS3Aは、アダムのベストセラー機として現在も続々とその導入が拡大しており、プロオーディオ界においてアダムの名を不動のものにする力強い原動力となっています。

アダムのアイデンティティーを象徴しそのスピーカーシステムの全てに搭載されるARTトゥイーターは、Accelerated Ribbon Technologyの頭文字から来ており、"リボン型を促進させた技術"という意味で名づけられています。そしてその内容は、ハイルドライバーの動作原理に基づきそれを現代の最新テクノロジーによって発展させた、先進のドライブユニットとして完成されています。

ハイル博士とアダム

そもそもハイルドライバーはDr. Oscar Heilによって1972年に発明され、一般的にはAMTドライバーという名称で認知されてきました。AMTはAir Motion Transformerの略で"空気の動作形態を変換する"という、文字通りその内容を表わすものとなっています。また最近ではJETトゥイーターとしても知られるようになりましたが、JETはJet Emission Tweeterの略でその動作が"空気を吸入し圧縮して放出する"、というジェットエンジンと同じ方式であることに由来しています。このJETトゥイーターは、過去にELAC社でもその辣腕をふるい現在はアダムの社長を務める、クラウス・ハインツによって開発され命名されています。

ARTツイーターの動作方式

スピーカー界におけるノーベル賞ものの発明と称賛されるハイルドライバーは、アコーディオン状に折り曲げられたダイアフラムが磁界内に置かれ、そのダイアフラムに仕込まれた導体に信号電流が流れると、隣り合ったプリーツ同士が吸引および反発を行い、その谷間の空気を放出または吸入するという動作原理に基づいています。 この方式の第一の特徴は、通常のユニットがダイアフラムに接した空気を1:1の比率でドライブするのに対し、アコーディオン状のプリーツによって圧縮された空気が3〜5:1の比率で外気をドライブするエアモーション変換動作にあります。それはピストンモーションで空気を直接ドライブする、といったいわゆる一般的な形態による振動板というものは存在せず、したがってそれに起因する伝達ロスや歪みも発生しません。

しかし何よりもハイルドライバーのメリットは、圧縮伸張動作を行うダイアフラムによって、空気の動作スピードが何倍にも加速されることがあげられます。それはちょうどホーンと同じように空気負荷がよくかかることを意味し、立ち上がりおよび立ち下りの時間は大幅に短縮されます。結果ふつうのダイレクトラジエーターでは決して得られない、圧倒的なダイナミックトランジェントが実現されることとなります。

ARTツイーターとドームツイーターの比較ART対ドームツイーター

アダムARTトゥイーターは最新の素材をフルに活用し、また革新的な技術の投入によって実現しています。特にオリジナル・ハイルドライバーの問題点であった狭い指向特性を、その構造自体を見直すことによって劇的に改善した成果は、正に次世代のトゥイーターと呼ぶに相応しい次元で完成されています。

その第一の特徴は、エアモーション変換方式による斬新なドライブ方式があげられます。ARTトゥイーターでは、空気の圧縮伸張比が4:1になるように設計されています。それは通常のユニットと比較して4倍のスピードで空気をドライブすることを意味しており、その理想ともいえるハイトランジェントな応答特性により、楽器の質感描写はもとより微細な残響成分までも余すことなく再現し切ることが可能となります。

ダイアフラムは、カプトン製振動体にアルミ箔の導体をラミネートした構造を採用し、軽さと強度が高度な次元でブラッシュアップされた最新設計のものとなっています。またダイアフラムの面積は一般的な2.5cmドームトゥイーターの10倍以上、そして空気をドライブする放射面積は2.5倍を誇っていますが、逆に実効質量は2分の1程度である0.17gに抑えることに成功しています。特に放射面積の大小はダイナミックレンジの優劣に大きく関わる項目といえますが、その点においてもARTトゥイーターはドームトゥイーターを軽く凌駕しており、92dBの高能率と相まって2〜3倍のパワーハンドリング能力を実現しています。しかも導体を持つダイアフラム全体が常に外気と触れているため、ドームトゥイーターが抱える大入力時に高域がコンプレッションされてしまう、という問題とも無縁となっています。

ARTの周波数特性

そして強大な磁界を必要とするマグネットコンストラクションにおいても、最新の棒状ネオジウムマグネットを採用することにより、大幅なモディファイが実現されています。より強力な磁気回路の使用は、各プリーツの折幅を大きくすることが可能となります。 そして折幅の拡大はARTトゥイーターに格別な恩恵をもたらすこととなります。それは空気の圧縮伸張比の向上であり、またより低い再生周波数の実現です。アダムでは優れたクォリティーを持つARTトゥイーターの再生領域を、低域方向へと拡大することを一つの目標に掲げており、それは同種のものよりおよそ1オクターブ低い1,500Hzからのレスポンスを実現するに至っています。

これによるメリットはクロスオーバー周波数の1.800Hzから可聴限界の20KHzまで、実に4オクターブ近くにわたってARTトゥイーターが担当できるというものです。

結果として肝心な中域の密度感のアップに比類のないものを発揮し、他のコンパクト2ウェイでは決して味わえないまるでフルレンジのような一体感を醸し出すことに成功しています。またボイスコイルを使用しないARTトゥイーターの高性能ぶりは、インピーダンス特性ならびに位相特性においても顕著となっています。そのインピーダンス特性は再生帯域の全域で3.2Ω±0.05Ω、そして位相変移においては正に完璧ともいえる±1°を実現しています。

ARTミッドレンジ

ARTミッドレンジはARTトゥイーターの素晴らしい特性をそのままに、より低い周波数の再生を可能としたアダムならではの中域ドライバーです。その振動板面積は18cmコーン型ユニットとほぼイコールながら、実効質量は一ケタ以上も小さい0.7gを実現しています。また広大な指向特性、およびフラットなインピーダンス・カーブはARTトゥイーターと同等であり、特に重要な位相変移は使用帯域において何と±0.75°を達成するに至っています。そして空気をドライブする圧縮伸張比は3.5:1に設定されており、実効400Hzからのレスポンスによって、今まで聴き得なかった劇的ともいえるハイスピードで透明感に溢れた中域を捻り出します。それは同時にエネルギー感と浸透力の表出においても、正に2インチ・コンプレッションドライバーに匹敵するダイナミックレスポンスを兼ね備えています。この新世代ハイルドライバーとしては最大級を誇るARTミッドレンジによって、音楽再生にとって最も大切な中域は未曾有ともいえる圧倒的なハイパフォーマンスを手中に収めたといえるでしょう。

ヘキサコーンウーハー

アダム・スピーカーに求められたウーハー性能、それは圧倒的なトランジェントレスポンスを誇るARTドライバーに負けない反応の素速さでした。そしてそれを追い求めた結果、ハイエンドスピーカーによる搭載でもおなじみの、ドイツEATON社製の18.6cm HexaConeウーハーが採用されています。6の数字を意味するHexの文字が用いられているとおり、その大きな特徴はコーンのコア材に6角形ハニカム状のNomexを使用していることがあげられます。ノーメックスはデュポン社によるアラミド繊維の登録商標ですが、軽くて剛性がめっぽう高くケブラー同様防弾チョッキの素材としても知られています。ヘキサコーンは、ノーメックス製のハニカムコアを中心に置き、その両面をケブラーでコーティングした比類のない軽量高剛性仕様となっています。そのたわみを一切発生させない強度の高さ、そしてハニカムコアによる適度な内部損失が実現する色づけの少なさは、大音量時においても決して音程の明確さを失うことはありません。それはARTドライバーと正に一体化して動作し、ハイトランジェントでありながら深々とした低域をプロデュースします。