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3D Sound Designer - katsuyuki seto


映画館でのサラウンドサウンドという認識を超え、5.1chサラウンドシステムを音響空間として独自に考案し、映像抜きでのサラウンドサウンドの可能性を追求し続けてきたサウンドクリエイターkatsuyuki seto。2002年、5.1chサラウンドに特化したプライベートスタジオ『Studio Space Lab』を立ち上げ360度の音声再生領域を生かしながら、立体的かつ臨場感とパワーにあふれる『3Dサウンド』による音の空間演出を手掛けてきたSeto氏に、『3D Sound』が誕生するまでの経緯や制作の舞台裏について話を聞ききました。



まず最初に、音響業界に入ったきっかけや、商業施設のサウンドデザインに携わるようなった経緯を聞かせてください。
私は地元が神戸で、色々な出会いから、クラブの経営やプロデュースに携わることになりました。当時はフロントアクト、つまりはアーティストの側でした。その頃はHipHopが主流で、当時24歳だった私もHipHopのアーティストとしていろいろと活動していたのですが、そのころ神戸には大型のクラブがなかったため、神戸では最大となる700人規模のクラブを立ち上げることになりました。18歳のころから海外によく行っていたので、機材やスピーカーの選定に関しては海外のサウンドがベースになっていましたが、研究を進めていく中で、ある疑問を持ったのです。日本のクラブでは機材やスピーカーは海外と同じものが入っているのに、なぜクラブミュージックの低音の鳴りがここまで違うのかと。このことを紐解いていくと、クラブで使用される機材だけではなく、楽曲のミックスやマスタリング、そしてPAの調整などのささいな設定の差で、音が大きく変わるということが分かりました。そして、私自身の音作りも、その後そういったことをより意識した方法に変わっていったんです。

ちょうどその頃は時代がレコードからCDに完全に切り替わったときで、CDやMP3など、様々なフォーマットの音源が混在してきた時期でした。私は「いい音」を目指し、より優れた音質を、つまりハイビット・ハイサンプリングのデジタルオーディオを追及していました。しかしながら、当時の再生媒体は24bit/96kHzに対応していなかったので、自分が目指しているクオリティでの音源の提供はできませんでした。なので、神戸から上京したばかりの頃はバイトをしながらの活動でしたが、徐々にハイサンプリングやサラウンドサウンドが世の中に認知され始め、時代と自分のやりたいことがリンクし始めたんですね。知り合いのお店や商業施設へ自分の目指す形で音空間の提案ができるようになったのは、この頃からです。

瀬戸さんにとって、理想的な音響空間を造り出すためには何が一番大切だと思いますか?
高いお金をかけたからといって必ずいい音になるわけではありません。私が音響空間を作る際には、まずは電源システムを見直します。例えば、100V並列のシステムを200V直列のシステムに組み替えるなど、工夫をすることで100万円の電源ユニットを買うよりも大きな効果を得ることができます。安い機材でも音が良くなるので、まずはすべての機器の性能を時間かけて引き出します。その後、空間造りでスピーカーの配置を決めていく。これが一番大切なことだと思います。電気にこだわりがない一般の人でも、自分はどんな音が好きなのか、音質を引き出すにはどうしたらいいのかと、こだわりを持ってスピーカーを選ぶのが良いと思います。

瀬戸さんのキャリアの中で一番よく遭遇したモニタリング関連の問題は何かありますか?
私の音作りは5.1chや7.1chなど、ステレオではない形でスピーカーを設置することが基本になっているので、スピーカーの特性が大きな影響を及ぼします。ミキシング作業時など、作品の内容にもよりますが、私の場合は定位を非常に大事にしているので、定位が分かりやすいスピーカーを自分の定めたポジションに置けないと、ミックスがいつまでたっても上手くできません。

瀬戸さんの求める理想を実現できる機材の選定には苦労される時があるようですね。
そうですね、基本的には発売されているものをベースに置かないといけないのですが、自分のイメージにテクノロジーが追いつかない時がありますね。そういった場合には、自分でソフトウェアの開発やスピーカーの改造を行います。


今までADAMオーディオは、基本的にはスタジオモニターとして認知度を高めてきましたが、瀬戸さんには商業施設向けのプロジェクトでADAMモニターを多く導入していただいています。これはとても稀なケースなのですが、今まで具体的にどういったプロジェクトにADAMモニターを導入されたのか教えてください。
基本的には商業施設向けになりますが、私は「スタジオモニター」という区分けにはあまりこだわっていません。この言葉は、プロが使用するいい音であるという、ある種のブランディングだと思います。いい音のスピーカーがそのまま商業施設に導入されることは、今まであまりありませんでした。一般的に、商業施設への設備導入は建設会社や運営会社が手掛けていて、そこにちゃんとした音響が入ってくることがなかったんですね。天井埋め込み型など、商業施設向けのスピーカーしか選択肢がなかったのです。

ADAMを入れた最初の商業施設はサンシャインシティの展望台と水族館です。他にはニューバランスの原宿店と銀座店にも入っています。この三箇所が知名度も注目度も高い施設になると思います。

ADAMを商業施設に導入する際の苦労というか、工夫はありましたか?
ADAMのスタジオモニターは、ある程度環境の整った状態で使用される、いわゆる高級車みたいなものだと思っています。一方で、商業施設で使用されている一般的なスピーカーは利便性とコストが追及されていて、車でいうと乗用車みたいイメージですね。スタジオモニターに関わらず、スピーカー全般はチューニングを細かく追い込んでこそ良い音になると思いますが、商業施設の場合にはスピーカーを鳴らすための環境が整ってないので、まずはそこからですね。ADAMは良い音を鳴らして良い空間をつくりたいという所にピンポイントで導入しています。そのために、目に見えない電源システムから配線、機材室に至るまで非常にこだわって設計しています。

私が使用するコンテンツはDSDフォーマットで収録しているので、それをダウンコンバートして24bit/96kHz等に落とすのですが、その24bit/96kHzの音素材をイメージ通りに再生できるスピーカーがADAMのスピーカーです。自分の想像した通りに音が鳴るので、作業効率が良くなります。商業施設で使用する一般的なスピーカーには設置場所や仕様、アナウンススピーカーとしての役目など様々な制約があり、良い音響空間を作る為には結局専用のスピーカーを使う必要がある。そうなると音質にこだわらないと良い空間がつくれませんよということになる。こういった場面でADAMのスピーカーを導入しています。

システム導入後の評判も上々ということで、非常にうれしく思っています。
ADAMはハイレゾ以外の音源でも非常にいい音がしますし、もちろんハイレゾ音源を鳴らすとより明確に音が見えるので、非常に重宝しています。今後も音響設備の設計にどんどん活用していきたいと思っています。



サンシャインシティでのADAM の使用方法はどのようなものですか?
空間づくりとサプライズの2つの側面を大事にしました。サンシャインシティは水族館の他に、展望台や劇場の運営なども行っており、エンターテイメントが事業の中心にある会社です。サプライズと空間という2つの要素は、エンターテイメント事業ではすごく重要です。サプライズに関していうと、男性は入れませんが、地下にある女子トイレを昨年リニューアルしました。女性客を大事にするというのは、昨今のトレンドですね。これにはちゃんとした理由があり、トイレというのは男性は用を足せば終わってしまうエリアですが、女性はそこでお化粧や身だしなみを整えますよね。お子さん連れのご家族でも、女性の方がお子さんをトイレに連れて行かれる場合が多いので、赤ちゃんを寝かしつけたり、色々なコンテンツの可能性がそこにあるんですね。長くて20分位はそこにいる可能性がある。男性の場合は一般的に3分です。この機会をブランディングに活かせないか、居心地のいい空間を作れないかというのが、このプロジェクトの始まりでした。

まずは、パウダールームに3chのサラウンドシステムを組んでいます。パウダールーム自体が3面の間取りになっていて、センターに向かって3つのスピーカーが中心を囲むような設計になっています。理想は4chだったのですが、スペースの都合により3chとなりました。オーケストラの楽曲を流していて、曲は一緒なのですが座る場所によって聞こえ方が変わるというサプライズを設けています。サラウンドシステムを組んでいるので、トイレがホールのような音響空間になっているのです。トイレの個室に関しては、それぞれの個室がひとつの部屋というコンセプトでやっていて、部屋番号がつけられています。ジャズやクラシックなど、部屋ごとにテーマが分かれていて、すべての部屋にADAM A3Xが1台ずつ設置されています。各個室にはドアの開閉に反応するセンサーが取り付けられており、人が入ると音楽が鳴り、人が出る時には音楽が止まるオート再生のシステムが構築されています。各個室ではモノラルのライブのような音になっていますが、パウダールームに行くとコンサート会場みたいな音で、しかも一個一個の楽器が違うように聞こえるというサプライズがある。このような仕掛けになっています。

サンシャインシティ内の様々な場所にADAMが設置されていますが、利用されるシーンによってそれぞれのコンセプトがあるということですね。ベビールームではADAMのスピーカーはどのような役割を果たしていますか?
ベビールームではADAMと他のスピーカーが混在して設置されています。赤ちゃんが泣きやむ周波数というのがあり、その再生のために超高周波をきちんと再生できるシステムをどうしても入れたいという思いがありました。ですから、赤ちゃんが泣き止み、落ち着く空間をつくるためにADAM A3Xを2台入れています。この場所はどちらかというと、気持ちのいい音を聞いてもらい、リラックスできる空間をイメージしています。

コンセプトによってスピーカーの台数は変わり、台数が多いほうがすごいかというと、そういう訳ではありません。最初にコンセプトがあり、それに合った形でADAMのスピーカーを使わせてもらっています。

サンシャイン水族館に関してはどうですか?
設置場所が屋上なので、環境的には屋外となります。ADAMなどのスタジオアクティブスピーカーは屋外での使用がそもそも想定されておらず、漏電などの危険性もあるため、屋外での使用は基本的には不可能ですよね。どうしても天候に左右されてしまう。ただ、ハイレゾを16年間研究してきたこともあり、自分の中でどうしてもADAMを導入したいなという思いがありました。なので、雨のあたらないところに防水防塵対策をしたうえでA8Xを4発入れています。



展望台のカフェスペースにも導入していただきましたね。
このカフェスペースは展望台の出口にあり、いわゆるショップのようなエリアになっています。展望台の主軸は景色ですが、天候に大きく左右されてしまうので、悪天候でも楽しめるような空間づくりの一環として、VRアトラクションが導入されています。VRは非現実的な要素を持っているので、中には酔ってしまう人が出たり、テンションが上がりすぎてしまう人がいたりと、普段の感覚からはかけ離れた体験になるので、それをリセットするために先ほどのカフェでちょっとお茶でも飲んでもらって、一度リラックスして落ち着いてもらいたい、そんなコンセプトです。ここでは、各地のパワースポットで収録したハイレゾ音源を、Studio Space Labで研究した音源と混ぜ合わせて再生しています。これがお客さんに好評で、ひどいVR酔いをしてまったという話は、今の所一切聞いていません。

この場所ではA5Xを使用していますが、お客さんが「いかにもスピーカーから音が鳴っているよね」という意識になってしまうと、エンターテイメント感を抜くことが出来ないので、カフェにいるときには、「なんか音いいよね、居心地良いよね」って思ってもらえるようにしています。だから音も前面には出していません。意識してようやく音が聞こえるか聞こえないかくらいの空間。こういったバランス感覚は、経験とセンスが問われる領域です。ついつい「良い音でしょ」って主張したくなってしまうので、そうなるとtoo muchなんですよね。

その次にはニューバランスの原宿フラッグシップストアで導入していただきました。
3階あるフロアのうち2階と3階の天井にA3Xを4台ずつというレイアウトですね。お客さんが靴を選ぶとき、その運動をしている気分でショッピングできるように、というコンセプトです。フロアごとにテーマが分かれていて、エスカレーターを登ると音楽もクロスフェードしていくようになっています。ニューバランスに対する反応は、音楽関係者は当然のこと、音響に対する一般の方の反応がすごいですね。やはり原宿は様々な音が鳴っている街なので、サウンドデザインするときに街の音のインフラを見るようにしました。他のショップがどういう音を流していて、どういう音量感で、人の流れがどうなっているかなど、これらを数値化してから実際の計画を立てていったのです。再生するBGMはほぼ全てStudio Space Labでミックスした音源になっています。有線を流すこともありますが、基本的には、きちんと差別化ができてニューバランスとしての価値が伝わる音楽を選んでいます。それから、各階に陳列されている商品はそれぞれ違うので、そのコンセプトに合わせた空間作りをしています。スピーカーの選定に関しては、実はA3Xで大丈夫かなという心配がありましたが、設計図面見たときにA3Xでいけると判断し、天井の高さなども利用して音響を作りこんでいきました。

店舗では環境音などの自然の音も流しており、音源にはニューヨークのハイドパークやセントラルパークなどで実際に収録した素材を使っています。単純に自然の音を入れているわけではなくて、フロアごとのコンセプトに合わせて空間をつくる。そういう繊細なことを表現したいとなるとADAMになるんです。フロアを移動すると音がクロスオーバーしていくのはまさに狙いで、あれは他のスピーカーではなかなか出来ないんですよ。ADAMの特性でないと出来ないことです。



最近手がけられたプロジェクトは、銀座シックスの大食堂。こちらはフードコートということで、他のプロジェクトとはまた違った趣向を感じます。
「大食堂」って言葉が「銀座」という言葉とディスマッチしているんです。「銀座」という、ある意味ハイソサエティなものと、「大食堂」といういわゆる大衆的なもの。この2つが混ざったときに何が表現できるのか。ここに焦点をあてたブランディングを音で創りたいと思いました。「大食堂」は人がダーっと沢山いて急(せ)かしく見えるイメージですが、「銀座」は落ち着いてご飯を食べるイメージなんです。このイメージの中間を上手く音響で表現できないかなと思い、ADAM A3Xの導入を決めました。

大食堂の中には色々な食べ物の店舗が入っているのですが、上階に上がると全店舗のメニューが頼めるテラス席のエリアがあります。このエリアの差別化として、各店舗のスピーカーから流れる音を変えています。例えば、秋田の比内地鶏だったら、秋田の比内地鶏が育成されている地域の山の音を流しています。要は、食材の環境の音。海鮮物だったら海の音、波の音を使っています。急かしくはなく、気品がありながらも誰にでも馴染みのある音というコンセプトです。BGMも入れていますが、結局お店の方はBGMをほとんど再生していないようです。音量のバランスはお店にお任せしていますが、BGMよりもStudio Space Labで制作したサラウンドの環境音を気に入って流していただけているようで、とてもうれしく思っています。朝昼夜と時間が経つにつれて、音の内容も自然と変わっていきます。エリアによって秋田だったら秋田、築地だったら築地と、それぞれの場所で聞こえる音もちゃんと違います。空間自体に仕切はありませんが、音のカーテンによって、場所によって聴こえる音が変わるような工夫をしています。もちろん、全体で聞くとひとつの音になっているので、ある意味で不思議な空間になっていると思います。

瀬戸さんがADAMを初めて聞いたのはどこでしたか。
だいぶ前ですよ。僕には機材オタクだった時代がありまして、世の中に存在する機材を全部チェックしてやろうと思った時期があったんです(笑)。クロックジェネレーターや音楽制作ソフト、自作パソコンなど色々と研究しましたが、スタジオで使われている世界中のモニタースピーカーをチェックしようと思い、日本に代理店があるメーカーのモニターはほぼ全て試聴しました。それこそインタービーに行くところから始めて、メーカーさんや代理店さんの担当者の方と名刺交換をさせていただいて、デモのお願いをして、、、色々と頑張っていました。私が25才の時だったので、もう17年も前のことになりますね。ちょうどそのころADAMというモニターの音がいいらしいと噂になりつつある時期だったと思います。

当時の印象としては、歌物のミックスがやりやすいイメージを持っていました。特に、ナチュラルな低音と、音の分離感が好みでしたね。音が分離するっていうことは、声が分かりやすくなり、ミックスしやすかったんです。確かS3Aと、他にも数種類の機種を自分のスタジオで試聴させてもらいました。その時にもとても気に入りましたが、当時はお金の面でもあまり余裕がなかったので(笑)、購入するまでには至りませんでした。いい音を追求していく上で、いつか使いたいという思いはずっとありましたね。特に、当時使っていたモニターと比べると、サラウンド環境で使用したときの出音には歴然とした差がありましたね。音を動かすような作業を行う時、音の動きがとても綺麗でした。

瀬戸さんの視点からADAMのモニターに対する総合的な評価をするとしたら?
ごまかしが利かない、繊細なスピーカーだと思います。ごまかしが利かない分、ちゃんとしたミックスに仕上げないと良い音で鳴らない、繊細かつ性格の分かりやすいスピーカーなのかなと思います。音にこだわればこだわるほど反応してくれるスピーカーだなと。そういう意味でいうと、とても愛着の湧くスピーカーですね。

最後になりますが、今後のADAMに期待することはありますか。
スタジオモニターとしては完璧だと思うのですが、商業施設に入れるという観点では話が変わってきます。取り付け金具のフレキシビリティや、防水防塵対策のオプションなど、あれば便利な点は色々とあります。天井に埋め込みできるタイプの製品もいいですね。「スタジオモニター」としての垣根を飛び越えて、屋内でも屋外でも使用できるような製品があればとても面白いと思います。音質においての要望は特にないですね。もしあったら使ってないので(笑)。

やはり、商業施設では設置という問題が大きいですね。スタジオモニターなのでそういった点に目がいっていないのは当然ですが、公共施設にマッチできるスピーカーがあれば、ADAMの可能性はより大きく広がると期待しています。

貴重なお話しを聞かせていただきありがとうございました!





瀬戸さんは、今年2017年5月にお台場で開催された花火と音楽が融合した初のイベント「STAR ISLAND」の音響も手掛けられ、このイベントにておいてもADAMを使用していただきました。



常に新しい取り組みを続けられている瀬戸さんの更なるご活躍に、これからも大いに期待を寄せたいと思います!

katsuyuki seto オフィシャルウェブサイト: http://www.ks-side-effect.com/
所属事務所 サニーサイドアップ: http://www.ssu.co.jp/service/ssupeople/katsuyuki_seto/

導入施設リンク:
サンシャインシティ: http://www.sunshinecity.co.jp/
SKY CIRCUS (屋上展望台): http://www.skycircus.jp/
サンシャイン水族館: http://www.sunshinecity.co.jp/aquarium/
NEW BALANCE 原宿: http://store.newbalance.co.jp/official-store/Harajuku
銀座SIX 銀座大食堂: https://ginza6.tokyo/shops/1233
STAR ISLAND: http://www.star-island.jp/